公認心理師試験対策!防衛機制の種類について(精神分析における)
防衛機制とは?
自分を守るために無意識にしている認知や言動などです。ストレスが生じた時、無意識の中にある欲求が、表に現れようとします。その時に無意識に防衛機制が働きます。心が傷つきすぎることがないように、認知や言動を駆使して守っています。
この防衛が弱すぎると、心が傷つきすぎて健全な発達や行動を取れなくなり、その反対に防衛が強すぎても、パーソナリティの偏りとなってしまうこともあります。
防衛機制には、成熟したものから未熟なもの、精神病的なものまで様々なレベルがあります。18歳未満は発達途中なので、防衛機制が未熟であることは問題ありません。
次に防衛機制の種類について見ていきたいと思います。
成熟した防衛機制
この防衛機制が使えている時は心に過度に負担がかかっていないと考えられます。
成熟した防衛機制では、その人の欲求や葛藤が意識化されていることが多くあります。
欲求や葛藤が社会的に受け入れられる、より価値のあるものとして表現され、開放されています。
- 抑制:苦痛な感情や記憶を意識の外に追い出すこと。
- 愛他主義:自分で満たせなかった欲求を、他の誰かが満たすことのために献身的に尽くすこと。
- ユーモア:不快な感情を、笑いに変えることで発散・解放すること。
- 昇華:満たされなかった欲求を、社会的で価値ある行動へ転じたり、別のより良い高い目標を達成することで満たすこと。
- 予期:将来生じる不快な感情に対する現実的な予期であり、それに対して対処するための計画をすること。
神経症的な防衛機制
一つの防衛機制だけを頻繁に使ったり、柔軟性を失っている場合には、メンタルヘルスの問題が出てくる場合があります。
しかし、好ましい用いられ方をするものもあり、社会生活の中でよく用いられるものです。
- 抑圧:苦痛な感情や記憶、受け入れがたい欲求などを無意識の中に押し込めてしまうこと。
- 否認:出来事の意味の一部や全体を拒否し、存在しないことにすること。
- 知性化:苦痛や欲求を意識かするのが苦しいため、知識を集めたり抽象化したりと知的な態度を取ること。
- 反動形成:好きな子をいじめてしまうなど、受け入れがたい欲求を抑圧し、反対の方向の態度を取ること。
- 合理化:満たされなかった欲求に対して、最もらしい説明をつけることで認めがたい現実から目を逸らすこと。
- 補償:ある部分に劣等感を感じている場合、他の部分を優位にしたり、優位に立つことで劣等感を埋め合わせようとすること。
- 同一化:誰かの一部の特徴を自分の中に取り込んだり、同じものとして振る舞うこと。
- 置き換え:本当の欲求を抑圧し、身近で手に入れられる欲求を満足させることで充足すること。
未熟な防衛機制
パーソナリティ障害の診断基準に見られるものも含まれています。
防衛機制は、自分の心を守るためのものですが、対人関係を壊したり、社会生活に支障をきたす結果となることも多い防衛機制です。
- 理想化と脱価値化:理想化は、他人に対して実際以上の価値を見出し称賛すること。脱価値化は、自分の欲求を満たしてくれない相手を価値のないものとして極端に過小評価することです。理想化と脱価値化は、セットで起こることが多く、実際以上の評価をされていると思ったら、次は必要以上に過小評価されるなど、急に態度が変わります。
- 受動攻撃:自分が被害者となることで、相手を加害者とします。表向きは従順で怒りや敵意などの攻撃性が表れませんが、受動的に攻撃しています。
- 投影:自分の中に存在する受け入れ難い葛藤や感情を、本当は他人にその感情はないのに他人の中に存在していると感じること。
- 解離:受け入れることが困難な現実や外傷体験を、自分から切り離してしまうこと。その現実に付随する感情や行動、記憶などが曖昧になったり失われたりする。
- 分裂:人の良い面と悪い面を別のものとして隔離してしまうこと。
- 行動化:欲求や願望を、吟味することなく無意識のままに行動すること。犯罪行為や自傷行為などの問題行動として表出される。
精神病的防衛機制
精神病圏に見られる防衛機制です。これらの防衛機制が出現した場合は、精神病の発症を疑う必要があります。
- 現実の否認:数年前に亡くなった家族について、生きているかのように振る舞うなど、明らかに現実として起きている出来事を、なかったものとする。妄想もあり、現実を否認するだけでなく、自己責任や受けた衝撃・否認していることすら否認してしまいます。
- 現実の歪曲:現実を自分にとって都合の良いように、幻覚や誇大妄想も出現し歪曲する。
<参考文献>
・公認心理師必携テキスト.福島哲夫編集.株式会社学研メディカル秀潤社発行.2018年5月.初版第4刷.