公認心理師試験対策!向精神薬(抗精神病薬 編)
向精神薬について現任者講習テキストに沿ってまとめていきたいと思います。
向精神薬は、大きく分けて5つのカテゴリーに分類されます。従来は、適応となる疾患に基づき分類されてきましたが、従来の適応を越えて他のカテゴリーの疾患にも効果があることがわかってきました。そのため、従来の適応症に基づく分類は見直されつつあり、薬理学に従って分類する流れになっています。
現任者講習テキストでは、従来のカテゴリーごとにまとめられていますので、従来のカテゴリー分類を使いつつ、新しい適応についても抑えていきたいと思います。
抗精神病薬
抗精神病薬とは、主に統合失調症の治療に用いられてきましたが、双極性障害の興奮、うつ病の強い不穏・焦燥にも適応されます。(現任者講習テキストでは非定型抗精神病薬の適応となっています)
幻覚、妄想、精神運動興奮に対して効果を発揮します。
作用
- 鎮静作用:強い不安・焦燥、攻撃性、衝動性を抑えることができる
- 抗幻覚妄想作用:幻覚や妄想などを抑えることができる
- 賦活作用:統合失調症の陰性症状を軽くする。(活動性の低下、感情鈍麻、自発性低下など)
抗精神病薬の分類
定型抗精神病薬
定型抗精神病薬とは、第一世代抗精神病薬とも呼ばれる、脳内のドパミンの作用を遮断する作用機序があるとされる薬です。1950年代に発見され、統合失調症の治療に革命的な変化をもたらしました。
脳内のドーパミンを遮断するにあたって、必要な経路以外の経路もドーパミンを遮断してしまうため、副作用(錐体外路症状、高プロラクチン血症など)が出現します。この傾向は定型抗精神病薬の方が強いです。
この副作用の詳しい説明は、こちらに書いていますので、よかったらご覧下さい。
非定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬は、ドパミン以外の神経伝達物質(セロトニンなど)の受容体への作用がある薬物です。
定型抗精神病薬と比べ、副作用(錐体外路症状)が少ないとされています。また、統合失調症の陰性症状や認知障害に対する効果が期待でき、再発予防効果が定型抗精神病薬より高いと考えられているそうです。
現在では、非定型抗精神病薬が第一選択薬として選ばれやすいようです。
副作用(定型・非定型)
中枢神経系
- 過鎮静:眠気、だるさ、疲労感などがある。
- 錐体外路症状(アカシジア、急性ジストニア、遅発性ジスキネジア、パーキンソニズム):運動をするときに、全身の筋肉の運動を調整し、円滑な運動ができるように働く神経系を錐体外路系と言います。それが障害されると、不随意運動や運動の障害が起きます。
- けいれん:けいれん発作が起きやすくなります。
- 悪性症候群:副作用のうちで最も危険なもの。高熱、筋強剛、振戦、意識障害、CK上昇など。
自律神経系
- 抗コリン作用:アセチルコリンの働きが抑えられると考えると理解しやすい。副交感神経系の機能が抑制されることにより、口渇、便秘、麻痺性イレウス、排尿困難、頻脈などが生じる。
- 抗アドレナリン作用:起立性低血圧やふらつきなど。
- 心臓に対する副作用:突然死
内分泌・代謝系
- 高プロラクチン血症:女性では乳汁漏出や無月経、男性では女性化乳房。
- 性機能障害:性欲低下、ED。
- 食欲増進、体重増加:特に非定型抗精神病薬でみられる。
- 高血糖:非定型抗精神病薬でなりやすい。
- 水中毒:長期服薬の患者に見られることが多い。原因は抗コリン作用による口渇や、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、ストレスなど諸説ある。
- SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群またはバソプレッシン分泌過剰症):排尿を抑える抗利尿ホルモンが過剰に分泌されてしまい、体内に水が溜まってしまう。低ナトリウム血症になり脳浮腫やけいれん、意識障害を引き起こすこともある。
その他
- 肝障害:薬物性肝障害が起こることがある。
- 血液障害:顆粒球減少症や無顆粒球症。
- 皮膚症状:日光に過敏になり、皮膚の発赤や水泡が生じる。また色素沈着も。
<参考文献>
- 公認心理師現任者講習会テキスト[2019年版].一般財団法人日本心理研修センター監修.株式会社金剛出版発行.2019年2月第2刷
- 精神医学マイテキスト.武田雅俊監修.株式会社金芳堂発行.2014年4月改訂第2版第1刷