公認心理師試験に出題あり 犯罪・非行理論②
犯罪・非行理論について、前回の続きを書いていきたいと思います。今回は、「統制理論」から「ライフコース理論」です。
前回の記事はこちらです。
統制理論
主張
- 人は犯罪を行うことを前提とし、犯罪をしないように押しとめる力が弱いと犯罪を行う。
社会的絆理論
代表人物
ハーシ
主張
- 人が犯罪をしないのは、社会的絆によって阻止されているからであるととらえ、社会的絆が弱いと逸脱が生じる。
社会的絆の4つの要素
- 愛着
- 価値志向へのコミットメント:生活上の投資。報酬を失いたくない、将来を台無しにしたくない等。
- 活動への参加:合法的な活動への参加は犯行機会を遠のける。
- 信念
功績
- 犯罪の抑制要因に焦点を当てた。
疑問や批判
- 社会的絆の各要素について研究結果が不安定。
- 重大な犯罪に当てはまらない可能性。
- 逸脱行動が社会的絆を弱めることに対する相互作用が明らかになっていない。
自己統制論
代表人物
ハーシ(社会的絆理論から自己統制論へ)、ゴットフレッドソン
主張
- 低い自己統制が逸脱行動の発生に関与している。
- 自己統制は家庭や学校のしつけなどによって幼少期に決定され、基本的には一生変わらない。
功績
- 自己統制を測る尺度も作成され、意義があるとされた。
学習理論
功績
- 反社会的な認知や態度も学習されることを示した。
- 再犯率の低減のためには認知行動療法が有効であることを実証することにつながった。
- 犯罪が学習されたものであるという視点は、脱学習を可能とし、犯罪予防・更生への道が開けた。
分化的接触理論
代表人物
サザーランド
主張
- 犯罪は、犯罪を肯定する分化に接触することと、そこでの学習により生まれる。
- 犯罪の手口や技術だけでなく、動機、合理化、態度の学習も含まれる。
社会的学習理論
代表人物
エイカーズ
主張
- 分化的接触理論を拡張。強化の要因を広げ、観察学習による代理強化も理論の中に組み込んだ。
ラベリング理論
主張
- レッテルを貼られることで逸脱が生じる。
- 人は、一旦逸脱者としてレッテルが貼られると、周囲の人が逸脱者を避けたり排除する結果、逸脱がより増幅されるとしている。
- 選択的制裁:レッテルは社会的弱者に貼られやすい。社会の多数派のルールに基づき判断されやすいため。
- 否定的な同一性の形成:レッテルを貼られることで、そのように行動してしまうことで否定的な同一性を形成してしまう。
代表人物
ベッカー
功績
- 犯罪の原因を人格要因や環境要因だけを論じるのではなく、相互作用の視点から理解しようとした。
- 否定的な烙印付けを避けることを推進した。
批判
- レッテル貼りが実際に犯罪を増やしているか証拠を示すのが難しい。
- なぜ犯罪が起こるかは分からない。
- 個人差が把握しにくく、支援や介入がしにくい。
ラベリングによる再統合と恥づけの理論
犯罪者を社会の一員として再び向かい入れるための制裁や対応のあり方について論じている。
代表人物
ブレイスウェイト
ライフコース理論
- 国や時代を問わず、大多数の犯罪は10代の若者によって行われているが、20代以降は急に減少することが示されている。
- 犯罪がいつから始まったか、どう継続したか、いつ犯罪をやめたかと言った長期的な経過に焦点を当てている理論で、いくつかの理論に分かれている。
功績
- 犯罪の原因を、一時点を切り取ったり、短期間を見るのではなく、長期間の影響を考慮したこと。犯罪を辞める要因に焦点を当てたこと。
モフィットの主張
- 10代の犯罪の増加の背景には2つのパターンがある。
- 一つは「生涯持続型」で、幼少期から反社会的行動を示し、成人以降も犯罪を続けるパターン。この背景には、神経心理学的欠陥がある。
- もう一つは「青年期限定型」で青年期に非行をするが、成人に達すると犯罪を辞めるパターン。背景には、身体的な成熟に対し、大人社会の行動への参加は阻まれているという成熟ギャップがある。
サンプソンとラウブの主張
- 人生で積み重なっていく個人的な要因によって、犯罪を継続することも辞めることもあり得る。
- 幸せな結婚や就職は転換点になる。
司法分野で点数を取れるようになるためにお勧めの本
私が購入したテキストでは、司法分野があまり詳しく載っていなかったため、1冊購入することにしました。こちらの2冊で強調されている内容は、過去にも出題されている印象がありました。