公認心理師試験に出題あり 犯罪・非行の理論①

今日は司法分野についてです。長くなるので、2つに分けたいと思います。犯罪・非行の理論は、過去に出題されていました。名前と、どんな理論かは覚えた方が良さそうです。

犯罪・非行の理論

心霊論

18世紀初頭まで、犯罪や非行は悪魔や鬼の仕業だと言われていた。

https://www.irasutoya.com/2017/06/blog-post_978.html

古典派

心霊論の次の理論。犯罪の原因は、霊的なものではなく人間の行動であり、犯罪を減らすためには刑罰が有効とした。

https://www.irasutoya.com/2014/07/blog-post_9239.html

主張

  • 人は、刑罰による損害と、犯罪から得られる利益を天秤にかけて、行動するか決める。
  • 刑罰を工夫すれば、理性的である人間は犯罪を選ばない。
  • 刑罰の目的は犯罪の防止。
  • 刑罰を過剰にしすぎると、犯罪の増加につながる。
  • 刑罰が効果的になるためには、周知徹底、迅速・確実な執行が必要。

代表人物

イタリアの法学者「ベッカリーア」

功績

  • 犯罪率を減らすための効果的な刑罰のあり方を模索する流れを作った。(当時の司法制度は気まぐれだった)
  • 犯罪の原因を、心霊とするのではなく、個人の自由意志の産物としてとらえ、その視点から対策を検討したこと。

疑問や批判

  • 人間を合理的な存在と仮定しているが、そうでない人もいる。
  • 自己利益のための犯罪でないケースもある。
  • 個人が犯罪に及ぶかどうかは刑罰のあり方によると仮定しているが、他の要因の方が犯罪の発生確率に影響を与えている可能性もある。

関連理論

新古典派(1970年代後半より)

  • 合理的選択理論:犯罪者はなんらかの損得の計算をするものの、不確実で制約のある状況下での判断であり、必ずしも合理的ではない(限定合理性)こと。
  • コーニッシュとクラークが提唱。

日常活動理論

  • 犯行の機会を減らすことで犯罪を減少させようとする。
  • フェルソンが提唱。

実証主義

主張

  • 刑務所に収容されている犯罪者の頭蓋骨等の身体的特徴を調べ、犯罪者と非犯罪者の間には決定的に身体的な違いがある。
  • 犯罪者は、進化の初期の段階へ「先祖返り」をしており、現代人より大きく退化している。そのため、現在の社会で守るべきルールに沿って行動することができない。
  • 生来性犯罪者説を唱えた。
https://www.irasutoya.com/2018/10/blog-post_804.html

代表人物

精神科医ロンブローゾ

功績

  • 犯罪の原因を考える上で、刑罰のあり方ではなく、個々の人間に目を向けたこと。
  • 科学的で客観的な手法で犯罪者を調べようとしたこと。
  • 遺伝的な要因等、生物社会犯罪学の領域に貢献したこと。

疑問や批判

  • 人体測定の方法が客観性を欠いていた。
  • 身体的な特徴と行動的な特徴の関連を示す根拠が薄かった。
  • 心理・社会的な視点が欠けていた。
  • 生まれ持って犯罪者の素質があるとすることは、改善更生を悲観的にした。

緊張理論 

三大理論の一つ(他:統制理論、学習理論)

主張

「人々に犯罪を行わせるように駆り立てるある種の緊張が生じている」ことに焦点を当てた理論の総論。

アノミー理論

主張

  • 社会構造に埋め込まれた不平等や差別が、社会内に緊張を生み出し、その結果として特定の人々を犯罪に駆り立てる。
  • 緊張は貧困層などの特定階層の人々に集中しやすい。
  • 性格や能力などの個人の要因ではなく、資産の獲得と言う目標(文化的目標)を達成するための機会や手段(制度的手段)が平等でなく、偏って配分されている社会構造の結果であり、不利な状況に置かれている人々が犯罪に及びやすいため、特定階層の人々に集中しやすい。
  • 文化的目標とは:社会で共通の価値があるとされる目標。
  • 制度的手段とは:目標を達成するための合法的な手段や機会。
https://www.irasutoya.com/2014/08/blog-post_44.html

代表人物

マートン

功績

  • 犯罪の背景にある社会構造に注目した点。
  • 社会政策の理論的な支えになった。

批判

  • 価値観が多様化した今では、人に共通してあるとされる文化的目標は存在しない。
  • 緊張状態に置かれたとしても、対応方法は個人によって異なる。
  • 個人がいつ犯罪をするかまでは説明できない。

非行下位文化論

主張

文化に対して、下位の文化の中で生きている人は犯罪を犯しやすい。(例:アメリカのスラム街では生きるために犯罪をしている)

代表人物

コーエン

非行と機会に関する理論

代表人物:クロウォードとオーリン

一般緊張理論

主張

アノミー理論を拡充させ、経済的目標以外にも様々な目標があり、それに応じた様々な緊張の型があるとした。(例:高齢期になり、社会的地位が変化したことにより、価値を失ったと感じ犯罪に至ってしまう。)

引用:一般緊張理論の観点から見た高齢者犯罪-東京都における高齢者の万引きの研究.齊藤 知範.https://researchmap.jp/saitoht/published_papers/13800309

代表人物

アグニュー

制度的アノミー理論

主張

「アメリカンドリーム」(利己主義や競争、過度の物質主義を追及する)が犯罪を誘発している。

代表人物

メスナーとローゼンフェルド

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