第3回公認心理師試験問題:問29 糖尿病・非定型抗精神病薬について
第3回公認心理師試験で出題された問題について、理解を深めるために復習していきたいと思います。
Q:糖尿病について、正しいものを1つ選べ
- 糖尿病は、1型から2型に移行することが多い。
- 糖尿病の運動療法には、無酸素運動が有効である。
- 2型糖尿病患者に、血糖自己測定(SMBG)は不必要である。
- 非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある。
- 健診でHbA1c値が6.8%であった場合は、糖尿病の可能性は低い。
答えは選択肢4だと予測しているところが多いです。
解いた感想
医療職なら勉強している部分だと思いますが、心理職が知っていなくてはいけないことなのかと疑問はありました。この問題は、糖尿病の知識を問う問題というよりも、向精神薬の知識を問いたかったのではないかと感じました。
選択肢4は、看護師の国試でも出題されやすかったような記憶があります。
選択肢4について
非定型抗精神病薬のうち、オランザピンやクエチアピンで高血糖と糖尿病性毛とアシドーシスの発生が報告されている。
現在、これらの薬は糖尿病患者に投与してはいけないことになっている。
精神医学マイテキスト.武田雅俊監修.株式会社金芳堂発行.2014年4月改定第2版第1刷 より引用
非定型抗精神病薬のオランザピン(ジプレキサ®︎)とクエチアピン(セロクエル®︎)は糖尿病患者には禁忌であるため、選択肢4は適切と言えると思います。
抗精神病薬の副作用について、過去にこちらの記事にまとめましたのでよかったらご参照下さい。第3回試験は、内分泌系の問題が割と出題されていました。薬の副作用にも内分泌系のものがありますので、もう一度見直したいと思います。水中毒とか。
選択肢1・3について
糖尿病は、1型から2型に移行することはありません。血糖値が高くなってしまうという病態は同じですが、原因が異なります。
1型糖尿病
- 若年層に多く発症
- 膵臓のβ細胞が破壊され、インスリン欠乏に至る
- 生活習慣とは関係なく急激に発症する
- やせ型の方が多い
- インスリンがほとんど出なくなり血糖値が高くなる
- 治療はインスリン注射
2型糖尿病
- 中高年に多く発症
- 遺伝や生活習慣の影響によりインスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなって血糖値が高くなる
- 治療は食事療法や運動療法、場合によっては内服薬やインスリン注射を使用する
1型から2型に移行することはなく、2型も血糖の自己測定を行いますので、選択肢1と3は不適切と言えると思います。
選択肢2について
糖尿病の運動療法には一般的には有酸素運動が勧められると思います。しかし、無酸素運動とも組み合わせることが効果的だと思うので、無酸素運動は効果がないかと言われると分かりませんでした。
選択肢を見た時に、有酸素運動が有効と言いたいのかと思い、不適切としました。
有酸素運動は、酸素を使い体内の糖質(血糖)と脂質をエネルギー源とするため、糖尿病の運動療法に効果を表します。糖質の他にも、LDLコレステロール・中性脂肪・体脂肪の減少が期待されます。
- エアロビクスダンス
- エアロバイク
- 水泳
- ジョギング
- ウォーキング
- サイクリング など
無酸素運動は、短距離走や筋力トレーニングなど短時間に強い力を発揮する運動のことです。筋肉を動かすエネルギー源を、酸素を使わずに作り出すことから無酸素運動と呼ばれています。
無酸素運動は、長時間行うことは難しいですが、筋力がつきます。
選択肢5について
糖尿病を疑う目安として、以下の2つが挙げられます。
- 空腹時血糖値:126mg/gl以上
- HbA1c:6.5%以上
5の、HbA1c6.8%は糖尿病の疑いがあり、受診が必要な値です。「糖尿病の可能性は低い」が誤りで選択肢5は不適切だと考えられます。
<参考文献>
- 精神医学マイテキスト.武田雅俊監修.株式会社金芳堂発行.2014年4月改定第2版第1刷.
- 糖尿病を改善するための運動.E−ヘルスネット.厚生労働省.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html
- エアロビクス/有酸素性運動.E−ヘルスネット.厚生労働省.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-072.html