日本で生まれた心理療法 森田療法について
森田療法とは
- 創始者:森田正馬
- 日本で生まれた心理療法
- 心身一元論:「心身は単に同一物の両方面である、只其の表裏の観方を異にするまでのことだと云うのである」
- 心は周囲との相関でたえず変化するため、その自然な心の変化を体験させ、ライフサイクル上の変化や病、老いなどの様々な変化の需要を促進することが治療テーマ
- 悩みや苦痛をそのまま取り上げ、整理して問題解決法を示していく、1910年代に日本で始められた認知行動療法と言える。
森田療法の対象となる人
- 森田療法の対象は「森田神経質」と呼ばれる。
- 森田神経質は、素質(ヒポコンドリー性基調)、機会、病因(精神交互作用)が影響しあってなるとしました。
- ヒポコンドリー性基調:持って生まれた性質。不安に陥りやすい傾向。
- 精神交互作用:不安に注意が集中してしまい、さらに不安を鋭く・強く感じるようになり、そのせいでさらに注意がひきつけられてしまう悪循環のこと。
森田神経症の方は、上記に加え、「思考の矛盾」もあります。
思考の矛盾とは、不安のない自分を理想の自分とし、現実の不安を抱えた自分とのギャップを抱えています。「こうあるべき」という思考を抱えており、自分の意思でコントロールしようとしています。森田は、情緒的な反応は自然なことで、それを自分でコントロールしようとすることはできないとしています。
治療モデル
1、行動モデル
不安・恐怖があっても、現実の世界での生活は可能であることを体験し、達成感を得る。
2、受容モデル
不安・恐怖など、排除したい気分を受容する。不安や恐怖を排除せず、受け止め、付き合うこと。
治療の進め方
外来森田療法
- まずは患者に森田療法についての本を読んでもらう。その上で、自分に適しているか判断してもらう。(自己決定のプロセスを経た上で治療を始めることが重要)
- 外来では、日記療法を行うことが多い。
- 1〜2週に1回の面接に日記を持参し、治療者に見せる。
- その場で日記にコメントを加えるか、日記を2冊用意してもらい、次の面接までに治療者がコメントをする2種類の方法がある。
日記に書くこと
- 月日(治療開始何日めか)
- 1日の生活・体験
- 症状・気持ちについて
- 毎日1日1ページ程度
日記の効果
- その日の出来事を振り返り、内省する機会になる。
- 主体的に自分の不安を自分なりに克服しようとする態度を促す。
- 自己理解を深め、自己のあり方を修正する原動力となる。
- 記録として残るので、振り返って読むことができ、自己修正に十分な時間をかけることができる。
入院森田療法
原則として1ヶ月。家族・社会から遮断され、連絡は治療者が行う。
1、臥褥期(1週間)
- 食事・トイレ以外は終日横になっている。
- 様々な感情や考えが浮かぶが、そのままに体験する。
この時期に起こりやすいこと
最初の2日間ほどはよく眠る。その後数日間、辛い思い出を思い出し、将来の不安と直面する。
後半になると、身体的、心理的なレベルで活動欲求を自覚する。
2、軽作業期(数日〜1週間)
- 院内での軽作業を行う。
- 毎日夜に日記を書く。
- 症状を患者同士で伝え合わない約束をする。
この時期に起こりやすいこと
知らない集団での生活に不安や恐怖が一時的に強くなる。
3、作業期(2〜3ヶ月)
- 午前・午後の共同での作業、グループでのレクリエーションを行う。
- 作業は食事以外の生活をするための全てのこと、園芸、動物の世話、陶芸など。
- 臥褥期気づいた活動欲求をより社会化できるよう、現実へ関与する能力の発達を促す。
この時期に起こりやすいこと
「こうあるべき」思考があるために、作業や人間関係で行き詰まりを感じる。そのような思考パターンを修正するように援助される。
4、社会訓練期(1ヶ月以内)
- 社会復帰のために、森田療法施設から職場や学校に通ったりする。
- また自宅で退院後の生活に備えたり、家族調整を行ったりする。
<参考資料>
- 心理療法ハンドブック.乾吉佑編.株式会社創元社発行.2016年8月第1版第8刷発行.
- 公認心理師必携テキスト.福島哲夫編集.株式会社学研メディカル秀潤社発行.2018年5月.初版第4刷.