公認心理師試験対策!日本で生まれた心理療法 内観療法について
内観療法について
特徴とキーワード
- 創始者:吉本伊信(1916−1988)
- 日本で生まれた心理療法
- 過去の対人関係における自分の態度や行動を調べることにより、真実の自己を発見するための技法。経時的・多面的・客観的に調べる。
- 「身調べ」という宗教的精神修養法に基づくものを改良し、誰にでもできる、宗教色が払拭されたものとした。
- 1954年から少年院・刑務所に導入。
- 1978年 日本内観学会が設立
- 1991年 内観国際会議が3年ごとに開催。世界9カ国が参加。
- 2002年 国際内観療法学会が3年に1回開催。
- 短期間で効果を示すことが少なくないため「ブリーフ・セラピー」としても注目されている。
- 自己啓発や悩みの解消法として用いられる場合は「内観法」と呼ばれる。
- 問題行動や心身の疾病の治療として用いられる場合は「内観療法」と呼ばれる。
- 一定条件のもとで1週間集中して行うのが「集中内観」
- 日常生活の中で継続的に行われるのが「日常内観」
- 「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3つのテーマに沿って具体的に事実を想起する。
適応となる方
内観療法は対人関係や生活習慣、人生観の問題などから発生したストレスに基づく疾病に適応する。
1、ストレス反応による身体化によるもの
チック、めまい、耳鳴り、頭痛、腹痛、下痢・便秘などの消化器症状、自律神経失調症、過呼吸、パニック障害など
2、ストレス反応による行動化によるもの
青少年の夜間徘徊・飲酒・喫煙など、万引き、粗暴行為、いじめ、暴力、虐待、DV、家出、引きこもり、自傷行為、自殺企図、犯罪行為、嗜癖行動など
3、ストレス反応による情動化によるもの
情緒不安定、神経症、うつ病、統合失調症、PTSD、パーソナリティ障害など
集中内観について
- 場所:和室の隅を屏風で仕切りそこに座る。
- 時間:基本は1週間。AM5:00〜PM9:00まで1日16時間。
- ルール:トイレ・入浴・就寝以外は屏風の外に出ないこと。食事は屏風の中で食べること。新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどの持ち込みや他人との雑談は禁止。
- 掃除:AM5:00起床後に30分、部屋・トイレ・浴室などを内観者が分担して掃除する。
- 方法
- 小学生から現在までを3年間隔で自分について想起する。
- 母親、父、配偶者、兄弟など、自分と人間関係の密度が高い人を選択する。(母親から始める場合が多い)
- 対象人物に対して、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を順番に想起する。
- その他のテーマとして、「嘘と盗み」「酒代の計算」「養育費」など、内観者の問題に応じたテーマについて想起することもある。
- 想起した内容は全て指導者に報告する義務はない。
- 内観の録音テープを食事時間に放送して内観過程の気づきを促す。
- 最終日に内観座談会を行い、内観による気づきの確認・日常内観の動機付けを行う。
効果
環境について
- 短期集中することにより、内観過程が深くなる。
- 屏風によって隔離された環境によって、刺激が遮断され、精神集中を図りやすい。また保護された安全な場所になるため、自分と向き合うことができる。
- 指導者との面談が短時間なので依存や転移・逆転移が起こりにくい。
想起することについて
- 対象人物を設定することにより、他者との境界が明確になり自我の確立に有効。
- 自分を取り巻く人々を通して自己を見ることは多面的に自分を見て、深めることにつながる。
- 小学生からの自分を振り返ることで、自己同一性の確立にも役立つ。
- してもらったことを意識的に思い出すことによって、自己肯定感が高まる。また愛情体験に気づくことができる。
- して返したことを調べると、自分が何もしていないことに気づき、対人関係の未熟さや自己中心性・依存性の強さに気づく。
- 迷惑をかけたことを調べると、他者に与えた苦しみの多さに気づき、罪悪感が生じる。しかし、愛情体験も感じることで、自分がかけた迷惑を他者は今も許し続けてくれていることに気づく。他者から受けた愛情の大きさに気づかされる。
- 過去の体験を調べることにより、今の問題に対する認知が変わり、症状が消失したり、行動変容を促すことができる。
- 新しい価値観・人生観を獲得できる。
<参考文献>
- 心理療法ハンドブック.乾吉佑編.株式会社創元社発行.2016年8月第1版第8刷発行.
- 公認心理師必携テキスト.福島哲夫編集.株式会社学研メディカル秀潤社発行.2018年5月.初版第4刷.