認知行動療法の一覧
新行動S‐R (古典的条件付け)がベースになるもの
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系統脱感作法 | 不安が強い場面では筋緊張が高まる。強度の強い不安場面に直面し、筋緊張を体感した後、筋弛緩(不安に拮抗する体験)を行うことで、不安・緊張に対処する(脱感作)方法。 |
フラッディング | 最大の不安や緊張が喚起される刺激に直接曝す。不安に拮抗する行動はせず、不快な状態にそのまま曝す。 |
エクスポージャー法 | 不適応反応が引き起こされる刺激にそのまま曝す。 フラッディングでは、最大の刺激に曝すが、この方法は、段階的に刺激を強くする。パニック障害やPTSDなどの不安障害や強迫性障害などで用いられる。 |
暴露反応妨害法 | 不安・緊張が引き起こされる刺激に曝し、何も対処せずにその状況に留まる方法。 身体的反応や情動的反応が生じたとしても、一定時間経過することで、それらの反応は沈静化することを学習することが狙い。 |
条件性制止療法 | 不適切反応を繰り返すことと休憩を繰り返し行う。繰り返すことで、不適応反応の出現率が減少する。また、休憩と不適切反応が減少している状況が結びつくことで、休憩時(何も反応していないとき)に不適応反応が生じなくなる。 |
嫌悪療法 | 不適応行動が生じる時に、嫌悪的事象を呈示することで、不適応行動の出現率が低下する。 (少なからず苦痛や嫌悪を与えるため、倫理的配慮が必要) |
応用行動分析がベースになるもの
内容 | |
シェイピング法 | 最終的に目指す行動(適応的行動)をスモールステップで段階的に形成(シェイピング)する方法。 手がかりになる刺激を呈示することで適応的行動を定着させ、その定着に伴って手がかりとなる刺激を除去することで、手がかりがなくても適応的行動が持続するようにする。 |
トークンエコノミー法 | トークン(報酬につながるもの)を与えることで適応的な行動の形成を行う。 |
自己主張訓練 (アサーション・トレーニング) | 対人関係場面において過緊張や不安を感じる場合などで用いられる。実際に人前で自己主張することを求め、緊張や不安を感じても、十分に自己主張可能であることを学習させる。 |
社会的技能訓練(SST) | 問題が生じる原因の一つに「社会的スキルの不足」がある場合、社会的スキルの獲得を目指す方法。 心理的安全性が確保された集団のなかで、不足しているスキルを実行し、他者から強化されることでそのスキルを獲得できる。 |
社会的学習理論がベースになるもの
内容 | |
モデリング | 他者が強化を受ける状況を観察することで自身の行動を形成する方法。 モデルとなる他者が強化を受けることは代理強化と呼ばれる。 |
セルフモニタリング法 | 自身を客観的にモニタリングし、その結果を確認することで、行動を形成する方法。自分自身の適応行動や良い変化を客観的に観察することで自己効力感が高まり、適応的行動の持続やよりよい行動の喚起につながる。行動以外に気分や感情など、心理的側面のモニタリングをすることも可能。 |
セルフコントロール法 | 自身の不適応的行動を抑制することや、適応的行動を維持することをセルフコントロール法と呼ぶ。 セルフモニタリングをしながら、セルフコントロールを行うこともある。 |
認知行動療法の第三世代
内容 | |
弁証法的行動療法 | 4つの治療様式として、グループ・スキルトレーニング、個人療法、電話によるコンタクト、支援者に対するスーパービジョンがある。 弁証法的な思考とは、ある状況とは対峙する、ある状況について、どちらかを選択するのではなく、両者を受け入れ、それらを超えた新しい方向性を導き出す思考法の事。 |
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理) | PTSDに対する効果が認められている。眼球運動を行うことで脳の両葉に急速な刺激を与え、言語的に説明できない記憶の再処理が促され、過去の悲惨な体験について認知的処理が可能になると考えられている。 |
マインドフルネス認知療法 | 反復性のうつ病に対する認知行動療法とマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)との統合を目指すもの。 認知を変容させることを目的とせず、思考や感情、身体感覚への気づきやそれらとの関係性の変化を目的とする。 「自分自身の考えと現実とは同等ではない」と気づくことを脱中心化と言うが、それを促進すること。 マインドフルネスな気づき(無評価的な気づき)をを促す訓練を行い、マインドレス(自動的な思考に囚われている状態)から抜け出し、うつ病の再発防止を目指す。 |
ACT(アクセプタンス・アンド・コミットセラピー) | ACTの目的は、困難な気分を取り除くことではなく、私たちが自らの人生と共に今この瞬間に留まり、価値づけられた行動へと向けて前に進むこととされている。ACTでは、不快な気分に対して、オープンでいること、過剰反応せずにいること、そして、そういったものを引き出されるような状況も避けずにいることを学べるよう促す。 ACTでクライアントに教示されるのは、「ただ気づいていること」、受容すること、私的出来事を思ったままにすることである。 |
<参考資料>
- 公認心理師必携テキスト.福島哲夫編集.株式会社学研メディカル秀潤社発行.2018年5月.初版第4刷.
- アクセプタンス&コミットメント・セラピー.https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B9%26%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC