公認心理師試験対策!医療観察法について
心神喪失等医療観察法について(以下、医療観察法とする)
- 対象:心神喪失または心神耗弱の状態で、重大な他害行為を行った人(注1)
- 目的:上記の対象者に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進すること
(注1)について
- 心神喪失の状態:精神障害のために事物の理非善悪を弁識する能力、またはその弁識に従って行動する能力のない状態(大審院判決1931年)
- 心神耗弱の状態:上記の能力を欠如する程度には達しないが著しく減退した状態。
- 重大な他害行為:殺人、放火、強盗、強制性交等、強制わいせつ、傷害の6つ(傷害以外は未遂も含みます)
対象となる他害行為について問われていた問題もあったため、6つの他害行為は覚えたいところです。傷害の定義を知っておくと選択を間違わずに済むかもしれません。
傷害罪とは?世界大百科事典 第2版の解説
狭義には刑法204条〈人の身体を傷害した者は,10年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する〉の規定する犯罪をいうが,広義でこれを含めて刑法が第27章(204条~208条の2)〈傷害の罪〉として規定する犯罪をいう場合もある。〈暴力行為等処罰ニ関スル法律〉(1条~1条ノ3)は,集団的暴行,凶器による傷害,常習暴行・傷害を加重して処罰している。 傷害罪が成立するためには傷害結果が生ずることを要するが,判例は,人の生理的機能の障害によってその健康状態を不良に変更することが傷害であるとし(生理機能障害説),身体的・精神的病気の惹起がこれにあたるとするが,人の頭髪を切断する行為は健康状態を不良にすることがないので傷害ではないとしている。
https://kotobank.jp/word/傷害罪-78879
医療観察法による手続きの流れ
①刑法による決定
まず、対象となる他害行為をしたものは、警察から検察庁に送致されます。そこで、心神喪失等で不起訴処分となるか、起訴されるかが決まります。
起訴されても、心神喪失等で無罪等の確定判決を受けると医療観察法の対象となります。
- 心神喪失で不起訴処分
- 起訴後、心神喪失等で無罪等の確定判決
このパターンが次の手順に進みます。
この判断の法律は、刑法です。
刑法(心神喪失および心神耗弱)
- 第39条:心神喪失者の行為は、罰しない。
- 2 心神耗弱者の行為は、その罪を軽減する。
②当初審判の申し立て
①の対象者に対し、検察官が地方裁判所に医療観察法による処遇の要否に関する審判(当初審判)を申し込みます。
③精神鑑定(医療観察法鑑定)
医療観察法による医療の要否に関する精神鑑定(医療観察法鑑定)が行われます。
- 誰が行うか:地方裁判所裁判官1名と精神保健審判員(精神科医)1名
- 処遇:次のいずれかに決定される。
⑴入院決定(図の☆)
⑵通院決定(図の★)
⑶本法による医療を行わない
入院決定を受けた場合☆
入院決定を受けた場合、指定入院医療機関(厚生労働大臣が指定)に入院し、他職種協働チームによる、制度に基づく専門的な医療を受ける。制度施行時(平成17年度)は全国で5機関のみでしたが、平成31年までに33機関と増加しています。
- 退院の決定は誰がするか?:裁判所
- 退院の申し立ては誰がするか?:対象者、対象者の保護者、指定入院医療機関
保護観察所は、入院した対象者の社会復帰を図るため、入院当初から退院に向けた生活環境の調整を行なっています。保護観察所の社会復帰調整官が、入院施設を訪問し、退院後の生活に関する希望を聴取したり、入院施設の施設と相談、都道府県・市町村等の精神保健福祉関係機関と連携をとったりしています。
指定入院医療機関について
指定入院医療機関のある都道府県
通院の決定を受けたもの★
保護観察所による精神保健観察を受けながら指定通院医療機関に通院する。
※精神保護観察は原則3年、裁判所の許可により最大2年延長可能)
指定通院医療機関は,平成31年時点で,全国で3,600機関あります。
保護観察所は、指定通院医療機関の管理者などと協議し、処遇実施計画を策定し、保護観察所の社会復帰調整官が観察・指導を行います。
医療観察法が適応された人数と内訳
医療観察法が施行された平成17年から平成30年までのものです。
30年の内訳を見ると、入院決定されたものが240人(74.5%)、通院決定されたものが26人(8%)、医療を行わない決定をされたものが48人(14.9%)でした。
また、30年における検察官申立人員を対象行為別で見ると,傷害が最も多く、次に殺人、放火の順でした。
<参考資料>
- 公認心理師現任者講習会テキスト[2019年版].一般財団法人日本心理研修センター.株式会社金剛出版発行.2019年2月15日2019年版第2刷.
- 令和元年版 犯罪白書 第4編/第10章/第3節.心神喪失者等医療観察制度http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_4_10_3_0.html