公認心理師試験頻出!抗うつ薬の効用と副作用
こんにちは。今日は、精神科で使われる薬の副作用について書きます。抗精神病薬の副作用と混同されやすいので、試験では出題しやすい部分だと思います。ポイントをおさえていきたいですね。
うつ病と薬
うつ病の原因・メカニズムはまだ明らかになっていませんが、神経伝達物質の中のセロトニンやノルアドレナリン量の減少がうつ病を引き起こしている可能性が大きいと言われています。しかし、なぜそれらの神経伝達物質が減るのか、原因はまだ不明です。うつ病の治療では一般的に、それらの神経伝達物質を補うために抗うつ薬を用いた治療を行います。
覚えたい神経伝達物質は以下の3つです。特に、セロトニンとノルアドレナリンは抗うつ薬とは深いつながりがあるので、ぜひ覚えたいところです。神経伝達物質についてはまた書きたいと思っているので、また別日にアップします。
まずは、うつ病で減少する言われるセロトニンですが、別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。セロトニンが活躍すると、不安を和らげてくれるのですが、不足すると不安な気持ちになりがちです。次にノルアドレナリンですが、こちらは興味や判断力に関係しています。不足すると、興味が湧かない、判断力も鈍る状態になるそうです。
抗うつ薬の種類
抗うつ薬には、従来型と新世代薬の2つのタイプがあります。
従来型は、約60年前に登場し、主な作用はノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害です。抗うつ効果が早く発言し、難治例や重症例への効果が高いと言われています。しかし、うつ状態に関係のない他の神経伝達物質にも影響してしまうため、副作用が多いと言われています。
新世代薬は、セロトニンやノルアドレナリンに関連した部分により結合しやすくなっています。(「選択性」と呼びます)従来型に比べ、選択制によりその他の神経伝達物質への影響が小さく、副作用や毒性が大きく軽減されたのが特徴です。そのため、最初に投与される第一選択薬として選ばれることが多いようです。
従来薬(三環系・四環系)の副作用
- 抗コリン作用:口渇、便秘、排尿障害(尿閉)、眼圧上昇など(抗コリン作用による尿が出にくくなる作用などを逆に利用して遺尿症や夜尿症などの治療へ使用する薬剤もある。)
- ヒスタミン関連:過鎮静、体重増加
- アドレナリン関連:眠気、めまい、ふらつき、低血圧
- 三環系の細胞毒性:不整脈やてんかん発作を起こすことがある
新世代薬(SSRI、SNRI、NaSSA)の副作用
- コリン関連:口渇、便秘、下痢
- セロトニン関連:吐気、悪心、便秘、下痢、頭痛
- アドレナリン関連:眠気、めまい、ふらつき
- 中枢神経刺激症状:賦活症候群(不安、焦燥、不眠、敵意、衝動性、易刺激性など)
従来薬で注目したいことは、薬によって作用する神経伝達物質が違うことです。名前に注目すると覚えやすいのですが、
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
- NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
それぞれ、セロトニン単独か、セロトニンとノルアドレナリン両方に作用するようになっています。長いので、見るだけで嫌になってしまう方もいるかもしれませんが、区切って読んでみると意外と分かりやすいかもしれません。
「選択的」「特異的」と言うのは、従来薬と違って、限られた神経伝達物質のみに作用しますよ、と言う意味で、続く名前がその限られた物質です。
例えば、SSRIは、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」なので、限定してセロトニンの再取り込みを阻害する薬、と言う意味です。そして、SSRIの2つ目のSはセロトニンのSです。(Slective Serotonin Reuptake Inhibitor)
こう覚えると、SNRIも同様に覚えられると思います。NはノルアドレナリンのNです。
次に、それぞれの副作用についてもう少し詳しく書いてみたいと思います。詳しい理由を知った方が覚えやすい方は読んでいただければと思うのですが、ざっくりと覚えたい方は飛ばしていただいて大丈夫です。上記の副作用を覚えましょう!
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):消化器症状の副作用が特徴的で、高い頻度で出現する。セロトニンは90%以上は腸管にあります。うつ状態では脳内のセロトニンは何らかの理由で減っていますが、消化管内のセロトニンは大きな変化はありません。そこにセロトニンの量を増やすはたらきをする薬が投与されるので、副作用が起きやすくなります。
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬):消化器症状は軽く、ノルアドレナリンの作用による動悸などが目立ちやすい。日本で使用できるSNRIはSSRIと比べ少ないのですが、欧米で行われた研究結果では、SNRIはSSRIよりも抗うつ効果発現が早く、副作用が軽い点から、有用性が高いといわれています。
- NaSSA:SSRI、SNRIと共通して消化器症状が特徴で、特に便秘の出現率が高いといわれています。特に多いのが、口渇、倦怠感、傾眠です。傾眠作用を上手に利用して、うつ状態における不眠の改善に用いることもあります。
SSRIはセロトニンに関連した副作用、SNRIはノルアドレナリンに関連した副作用、NaSSAはセロトニン関連もありますが口渇や傾眠が強い。
以上、抗うつ薬の効果と副作用でした。以上のことを踏まえて、過去問を解いてみましょう。
過去問チャレンジ
Q:選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>の副作用として、適切なものを2つ選べ。(2018年12月16日試験問57)
①心房細動②排尿障害③悪心・嘔吐④賦活症候群⑤起立性低血圧
A:③、④
正解率:66%
①②⑤は三環系抗うつ薬の副作用でみられる症状です。
③はセロトニン関連で起きやすい消化器症状ですね。④の賦活症候群は、アクチベーションシンドロームとも呼ばれています。抗うつ薬の副作用として知られますが、特にSSRIで出現しやすいそうです。服用開始や内服量が増えた時に現れやすく、出現したら原因となった薬剤の中止か減量が勧められています。
問題を解いてみると、覚えやすいですね。覚えることは多いですが、コツコツ頑張りましょう!
抗精神病薬の副作用も一緒に覚えましよう。過去にまとめたものです。よかったらご覧下さい(^^)